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アスリートの言葉学①長嶋茂雄さんの言葉を読む|その5

「ベースボールにジンクスなし」

(『長嶋茂雄語録』小林信也編・河出文庫・P118より)

2022.3.10 / バランスコラム

「ジンクス」って、みなさん好きですよね。なにかがうまくいったら、それをジンクスにしたがります。でも、絶対的なものを探してそれらしきものを崇めて頼ってみても、うまくいくはずなどありません。ジンクスに頼ったらダメなんです。

「ベースボールにジンクスなし」と言いきることができた長嶋茂雄さんは、そう明言できるだけの確信をじぶんの基礎にはっきりと持っていて、ブレることがなかったのでしょう。それは、すごい強みだろうと思いますね。

ジンクスがないということは、「こうだからこう」というものがないということです。固定化された答えはない。常にじぶんが新たにリニューアルされていかなければならないということです。そして常に追い求めなければならないということです。

ジンクスがないというのなら、では、なにに頼るのでしょうか。それは、いまここにいるじぶんです。あるいは「頼る」という感覚ですらなくて、いまここにいるじぶんとして「進んでいくだけ」というようなものなのかもしれません。

「オレたちに過去は必要じゃない。大切なのは今日から先をいかにやるかだ」という言葉も長嶋茂雄さんによるものです。ここで言いたいことは、過去を大事にしなくても、経験したことはなくならないのだから、過去にしがみついてもしょうがない、ということなのだと思います。

「過去は必要じゃない」というのは、「ジンクスなし」という言葉と同様、良かった過去を持ち続けて自己満足に陥ってはならないということでしょう。それは、じぶんのポジションをつねにニュートラルにしておく、ということでもあると思うのです。

過去の成功体験にしがみつかない。いつもじぶんをゼロベースに保つ。それが大事なのだということを、長嶋茂雄さんは伝えようとしているのでしょう。

つづく

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